日本大腸検査学会

ご挨拶

理事長就任のご挨拶

 

理事長  斎藤 豊  
(国立がん研究センター中央病院 内視鏡科科長・内視鏡センター長)

理事長 斎藤 豊 写真

 この度、故 勝健一先生、工藤進英先生という本学会の歴史を築かれてきた偉大な先達の後を受け、日本大腸検査学会理事長を拝命いたしました。誠に身に余る光栄であると同時に、その責任の重さに身の引き締まる思いでおります。

 本学会は、大腸検査に関する基礎的ならびに臨床的研究の推進を通じ、わが国の大腸がん診療、さらには国民の健康と福祉に多大な貢献を果たしてまいりました。Procto-Sigmoid Graphy に端を発し、注腸検査、大腸内視鏡診断・治療、CTコロノグラフィ、さらには近年では大腸カプセル内視鏡といった低侵襲検査モダリティへと発展してきた本学会の歩みは、日本の大腸検査学そのものの発展の歴史であります。

 現在、日本の大腸内視鏡診断・治療技術は、診断能、治療成績、安全性のいずれにおいても世界最高水準にあり、国際的にも高く評価されています。しかしその一方で、大腸がん検診の受診率は依然として低迷し、その結果として大腸がんの罹患率は先進国の中でも上昇傾向にあり、死亡率も下げ止まり、先進7カ国の中で最下位という厳しい現実に直面しています。

 この「世界に誇る診断・治療技術」と「社会実装の遅れ」との乖離こそ、今まさに本学会が真正面から取り組むべき最大の課題であると考えております。
 大腸内視鏡のみならず、大腸カプセル内視鏡を含む多様な検査選択肢を適切に位置づけ、国民にとって受診しやすい大腸検査体系を構築していくことは、本学会の重要な使命の一つです。

 本学会は、研究・教育・臨床の枠を超え、啓発と社会貢献をより強く意識した活動へと進化する必要があります。内視鏡医のみならず、内視鏡検査技師、看護師、関連職種との連携を一層深め、チーム医療としての「大腸検査学」を推進していきたいと考えております。今後は、内視鏡検査技師をはじめとするメディカルスタッフの会員拡大にも積極的に取り組み、本学会をより開かれた、多職種参加型の学術集団へと発展させてまいります。

 また、新専門医制度への移行後、学会の果たすべき役割も大きく変化しています。若手医師にとって魅力ある学会であること、女性医師が継続的に活躍できる環境を整えることは、学会の将来を左右する重要な課題です。理事・評議員への若手および女性医師の積極的な登用を進め、多様な視点を学会運営に反映させていきたいと考えております。

 故 勝健一先生、工藤進英先生をはじめ、これまで本学会を支えてこられた諸先輩方のご尽力に深く敬意を表するとともに、その志を次世代へと確実に継承し、日本の大腸がん診療の未来を切り拓く学会であり続けるよう、全力を尽くす所存です。

 会員の皆様、理事・評議員の先生方のご指導とご支援を賜りながら、本学会のさらなる発展、そして大腸がん検診受診率の向上と死亡率低減という社会的使命の達成に向け、ともに歩んでいければ幸いです。

 何卒、今後ともご支援、ご協力を賜りますようお願い申し上げ、理事長就任のご挨拶といたします。

 


 

就任の挨拶

 

理事長  工藤 進英

 この度日本大腸検査学会理事会(理事長:勝 健一先生)のご推挙で,2014年4月1日をもって理事長に就任致しました.

 本学会は,「大腸検査に関する基礎的ならびに臨床的研究の促進・発展を通じて,社会の福祉に貢献すること」を目的と致しております(本会規約第2条「目的」から).本学会の前身組織の大腸検査研究集会がはじめて開催されたのが1983年(昭和58年)11月,したがって本学会は32年の長い歴史を有する学会です.この間わが国では,胃癌に次いで大腸癌と炎症性大腸疾患が注目を集め,その早期発見と治療が臨床家にとって大きな課題となってきました.大腸癌の早期発見という点をとってみれば,大腸内視鏡診断が大きく進展した期間でもあります.今日,癌死のなかでも大腸癌が男女ともトップとなる時代が目前にあります.このように大腸癌と炎症性腸疾患に立ち向かう上で,ますます大腸検査の重要性が増してきております.このような時代背景の中で本学会の理事長を拝命することは甚だ名誉なことではありますが,同時に身の引き締まる思いを致しております.

 大腸検査・診断,大腸内視鏡治療,腹腔鏡下大腸手術の急速な普及展開は国民に対して大きな貢献を果たしてきています.このような日本の大腸内視鏡診断・治療学は世界のトップを走っております.日本の進んだ技術を広めるのも世界規模の要請となっております.また,大腸内視鏡検査だけではなくCT検査やその他のモダリティによる検査法も本学会で種々発表されており,さらにその進展が望まれています.さらには大腸検査に習熟した医師・医療スタッフの育成も社会的要請であり,本学会の責務の一つです.私の理事長としての仕事は,このように活発な展開を見せている本学会をさらに押し上げることであると考えております.

 そのためには,勝先生以下諸先生方のお力添えを引き続き賜り,会員の皆様のご協力を得ながら本学会の運営を進めていきたいものと考えております.

 会員諸氏の引き続きのご協力をお願いし,理事長就任のご挨拶と致します.

(日本大腸検査学会雑誌 vol.31 No.1 2014より)

 


 

本学会の歩みと今後の使命

 

名誉理事長  勝  健一

 昭和56年9月19日の第166回日本消化器病学会関東地方会で60mlの使い捨てグリセリン浣腸容器にバリウム溶液を入れ,外来診療中の直腸指診で不安があったときに60mlのバリウム注腸を行なって腹部単純X線写真により直腸がんを発見した経験を報告した.この結果を契機として名尾良憲(現名誉理事長)・故本田利夫(日本大学教授)・平塚秀雄(現理事)を中心にProcto-Sigmoid Graphyの研究会が発足した.その後,バリウム量は200mlとなり,専用の容器が開発され,薬事法の製造承認,保険適用などの適用と,老健法の大腸がん検診の普及とともに本学会は発展してきた.第1回研究会(青柳利雄会長)が昭和58年11月26日に開催された.太田製薬が大腸表面微細構造描出のために厚生省から得た研究補助金によるファインネットワーク描出のバリウムの開発と小生の考案した逆流防止弁付き・デイスポーザブル容器の特許を背景に太田製薬(株)の全面的支援の下に会員数は2,000名を超えるようになり第14回研究会(平成8年11月16日,東京)は1,000名を超える参加となった.

 老健法の大腸がん検診の普及により大腸内視鏡診断の急速な進歩と地方自治体の検診に伴う早期発見件数の増加は著しいものであった.しかし,それに伴う精密検査の責任体制と追跡成績は明確にされないままに法律は廃止されてしまった.特許期間の消滅とともに日本大腸検査学会として独立した.このような背景において本学会はわが国の大腸がん早期治療の重要な使命が託されているといえよう.CT導入によるバーチャルエンドスコピーをはじめとして種々の新しい発見手段と開腹手術せず腹腔鏡による大腸がん手術の普及は大腸がん早期発見の意義と国民に対する社会貢献として期待される.最近,生活習慣病である糖尿病患者のヘモグロビンA1c値が1%上昇すると結腸直腸がんのリスクは33%上昇するという論文が報告された.また,炎症性腸疾患に悪性病変の合併も普遍的なものとして認められるようになった.しかし,現状の便潜血反応陽性者に対する精密検査対象者すら網羅できていない状況において,効率のよい大腸検査法の開発と人材育成・普及は急務であり今後の本学会に期待される社会的使命は多大であります.会員諸氏のますますの活躍と社会的貢献を心から期待いたします.

(日本大腸検査学会雑誌 vol.22 No.1 2005より)