日本大腸検査学会

ご挨拶

 

就任の挨拶

 

理事長  工藤 進英

 この度日本大腸検査学会理事会(理事長:勝 健一先生)のご推挙で,2014年4月1日をもって理事長に就任致しました.

 本学会は,「大腸検査に関する基礎的ならびに臨床的研究の促進・発展を通じて,社会の福祉に貢献すること」を目的と致しております(本会規約第2条「目的」から).本学会の前身組織の大腸検査研究集会がはじめて開催されたのが1983年(昭和58年)11月,したがって本学会は32年の長い歴史を有する学会です.この間わが国では,胃癌に次いで大腸癌と炎症性大腸疾患が注目を集め,その早期発見と治療が臨床家にとって大きな課題となってきました.大腸癌の早期発見という点をとってみれば,大腸内視鏡診断が大きく進展した期間でもあります.今日,癌死のなかでも大腸癌が男女ともトップとなる時代が目前にあります.このように大腸癌と炎症性腸疾患に立ち向かう上で,ますます大腸検査の重要性が増してきております.このような時代背景の中で本学会の理事長を拝命することは甚だ名誉なことではありますが,同時に身の引き締まる思いを致しております.

 大腸検査・診断,大腸内視鏡治療,腹腔鏡下大腸手術の急速な普及展開は国民に対して大きな貢献を果たしてきています.このような日本の大腸内視鏡診断・治療学は世界のトップを走っております.日本の進んだ技術を広めるのも世界規模の要請となっております.また,大腸内視鏡検査だけではなくCT検査やその他のモダリティによる検査法も本学会で種々発表されており,さらにその進展が望まれています.さらには大腸検査に習熟した医師・医療スタッフの育成も社会的要請であり,本学会の責務の一つです.私の理事長としての仕事は,このように活発な展開を見せている本学会をさらに押し上げることであると考えております.

 そのためには,勝先生以下諸先生方のお力添えを引き続き賜り,会員の皆様のご協力を得ながら本学会の運営を進めていきたいものと考えております.

 会員諸氏の引き続きのご協力をお願いし,理事長就任のご挨拶と致します.

(日本大腸検査学会雑誌 vol.31 No.1 2014より)

 


 

本学会の歩みと今後の使命

 

名誉理事長  勝  健一

 昭和56年9月19日の第166回日本消化器病学会関東地方会で60mlの使い捨てグリセリン浣腸容器にバリウム溶液を入れ,外来診療中の直腸指診で不安があったときに60mlのバリウム注腸を行なって腹部単純X線写真により直腸がんを発見した経験を報告した.この結果を契機として名尾良憲(現名誉理事長)・故本田利夫(日本大学教授)・平塚秀雄(現理事)を中心にProcto-Sigmoid Graphyの研究会が発足した.その後,バリウム量は200mlとなり,専用の容器が開発され,薬事法の製造承認,保険適用などの適用と,老健法の大腸がん検診の普及とともに本学会は発展してきた.第1回研究会(青柳利雄会長)が昭和58年11月26日に開催された.太田製薬が大腸表面微細構造描出のために厚生省から得た研究補助金によるファインネットワーク描出のバリウムの開発と小生の考案した逆流防止弁付き・デイスポーザブル容器の特許を背景に太田製薬(株)の全面的支援の下に会員数は2,000名を超えるようになり第14回研究会(平成8年11月16日,東京)は1,000名を超える参加となった.

 老健法の大腸がん検診の普及により大腸内視鏡診断の急速な進歩と地方自治体の検診に伴う早期発見件数の増加は著しいものであった.しかし,それに伴う精密検査の責任体制と追跡成績は明確にされないままに法律は廃止されてしまった.特許期間の消滅とともに日本大腸検査学会として独立した.このような背景において本学会はわが国の大腸がん早期治療の重要な使命が託されているといえよう.CT導入によるバーチャルエンドスコピーをはじめとして種々の新しい発見手段と開腹手術せず腹腔鏡による大腸がん手術の普及は大腸がん早期発見の意義と国民に対する社会貢献として期待される.最近,生活習慣病である糖尿病患者のヘモグロビンA1c値が1%上昇すると結腸直腸がんのリスクは33%上昇するという論文が報告された.また,炎症性腸疾患に悪性病変の合併も普遍的なものとして認められるようになった.しかし,現状の便潜血反応陽性者に対する精密検査対象者すら網羅できていない状況において,効率のよい大腸検査法の開発と人材育成・普及は急務であり今後の本学会に期待される社会的使命は多大であります.会員諸氏のますますの活躍と社会的貢献を心から期待いたします.

(日本大腸検査学会雑誌 vol.22 No.1 2005より)